2017年12月18日月曜日

江戸

江戸のリサイクル


幕末に日本を訪れた多くの外国人は、「道に芥が捨てられていない」「町が奇麗」と驚嘆。
幕府は統制とともに循環型社会を推進する
江戸のリサイクルは、「物は大事に使う」「芥になるものは使わない」当り前の暮らしと、幕府の勤勉、質素・倹約等を奨励し奢侈(贅沢)禁止を進めた政策、当時の芥の種類によって進みました。


江戸時代の焼き接ぎ職人(守貞謾稿より)の拡大画像


 江戸時代の焼き接ぎ職人(守貞謾稿より)の拡大画像
幕府は、定書で「百姓之着物之事、・・布(苧麻)・木綿たるべし」「町人の衣類、上下その分限に随って、倹約を守ること」と布地の質や派手な色合いも禁止、ついには、生活の豪奢な江戸、大阪の豪商を闕所処分にする等の見せしめの統制も。 
綱吉の側用人の柳沢吉保は川越藩で、草木の若芽を漉き込んだ苅敷、草木灰等の肥料や保水を雑木林から得る循環型の新田開発。幕府首脳の自然と共生する循環型社会の「政治哲学」は注目すべきことで、江戸の町には芥改役を置き、芥の処理。
リサイクル生業のネットワークで質素なシンプルライフ
生活自体がシンプで必要以上の物はない生活をする庶民の生活水準がリサイクルを進め、社会自体が物資の循環を生業・産業のネットワークを確立。  



一つ目は、紙屑・古着・古銅・古鉄・古器物・樽・灰・古傘・蝋燭の流れ・大便等を回収する業。二つ目は、それらを修理・再生する業。屑鋳鉄師、印肉仕入、臼目立て、下駄歯入れ、錠前・雪駄・算盤直し、瀬戸物焼き接ぎ、提灯・傘張替え、磨師、眼鏡の仕替え、煙管の竹管替える羅宇羅屋,桶・樽の輪替のたが屋、竈師。三つ目は、再生したものを販売する業。浅草紙・還魂紙、銭を緡に差す時に使う銭茣蓙売り,古着屋、襟や裏地を売る半襟屋、棕櫚箒・縄・タワシ売り等々。
多くの生活用品が回収・修理・再生・販売されました。、着物の場合、着物・浴衣寝巻下着おむつ→雑巾→燃料→灰→肥料等→綿花→着物・浴衣という徹底した循環型。

着物は古着だが意気なお洒落

棒手振りや職人等の庶民の住いは、「間口九尺奥行二間」の裏店。土間には竈。自前の台所用品は、包丁、杓文字,皿、笊、茶碗,箸、すり鉢くらい。そして、布団一式。
着るものは、日本橋や大伝馬町の高級呉服店では買えず、神田川沿いの柳原土手や日本橋富沢町で古着を買います。
幕府の統制に対して江戸っ子は、友禅や江戸紫の江戸鹿子、江戸小紋、歌舞伎で流行った団十郎茶等で意気地、貧しくても湯屋と髪結いを毎日欠かさぬ粋を見せました。

「江戸の朝炊き」寒さ対策
食事の主食米は、「江戸の朝炊き」。一日分のご飯を炊き、昼は、朝の残りの冷や飯で残りの汁物などのぶっかけ飯。夜は早く寝るために食べないことも。裏店を出れば、蕎麦,天婦羅、寿司等の屋台もあり、天婦羅を食べ「天ぷらの指を擬宝珠へ引んなすり」と屋台で食べる江戸っ子たち。

当時高給取りの大工の手取りは一日540文位。米代一日三食茶碗3杯で約315文、豆腐14文・納豆4文、鮭の切り身12文、味噌・醤油17文…総計160文位(一文に20円かけると大体今の金額)
豆腐は今の豆腐の大きさの46倍ほどで、天明の飢饉の頃からでたベストセラー「豆腐百珍」」・・・・等で料理の仕方を工夫して豊かにします。  
江戸時代は、「江戸小氷期」。寒ければ、肌襦袢の上に長襦袢、下は股引に足袋(八丁堀の旦那のように毎日紺足袋は替えられない)の重ね着。それで耐えられなければ、湯たんぽや懐炉で暖まりました。わざと薄着をする「伊達の薄着」で冬を通す男衆も。
明かりに使う「百日蝋燭」は一本200文、匂わない、油は値が高く「早寝が得」。火事の多い江戸では、穴倉に家財を埋めて逃げる、だから江戸の町の十分の一は穴だったと。

裏店の「金の生る木」
 裏店の井戸と便所は共同使用。通例、大三か所、小一カ所。大小を分けて、大の方は葛西船で農民に肥料として売り、家守が共益金として長屋の管理と年始の店子への餅配り等
に使用した「金の生る木」。特上は幕府や大名の勤番者の「きんばん」、上は、町の中
にある公衆便所の「辻肥」、裏店の「町肥」等々、大にも値段の違いがありました。
出たごみは裏店に芥溜を作り生ごみ(肥料に)とその他に分け、町内のごみの集積場に、そ
れを芥船で、永代島や深川洲崎十万坪の埋め立てに。

循環型を築き上げた江戸時代
江戸社会は、1700年当時の人口世界シェア5%を占めた3000万人、幕末のGDPは、米国を一とすると、日本は1,75倍、英国2,8倍、阿蘭陀0,3倍という指標もあるほど。世界史的に大きな比重を占めた江戸は、貨幣経済を発展させ、自然と共生し循環型社会を当たり前にした社会でした。 


【読み】
(ごみ)
(かん)魂紙(こんし)(さし)差す時つかう(ぜに)茣蓙(ござ)売り
棕櫚(しゅろ)


2月の旬   イチョウイモ
                薬剤師 橋本紀代子 
 
先端がイチョウの葉のような形をしています。ヤマイモの一品種です。粘りが強くアクが少なく、変色しにくいのが特長です。
 関東ではヤマトイモとも呼ばれますが、関西で「ヤマトイモ」というとげんこつのようなツクネイモを指します。
 一般的にはとろろ汁に用いることから、ジネンジョ(自然薯)やナガイモなども含めてとろろイモといいます。
 原産地は中国で、紀元前から栽培されています。日本での栽培も縄文時代後期から。収穫は1112月です。
 イチョウイモはでんぷんの消化酵素であるアミラーゼが多く、「ジオスゲニン」という天然のステロイド、疲労回復に効果のあるビタミンB群やビタミンCも含まれます。
 漢方で山薬(さん やく)と呼ばれるナガイモは滋養強壮、下痢を止める、夜間頻尿を改善するなどの働きがあるとされていますが、イチョウイモにも同じ効果があります。

おいしい食べ方と保存法
 とろろ汁は、すりおろしたイチョウイモに冷ましただし汁を加えます。だし汁を冷ますのは、消化酵素が熱に弱いからです。
 酢のもの、煮物、スープ、芋がゆ、油炒め、ソバやかまぼこのつなぎ、お菓子にも用います。
 イチョウイモをすりおろし、鶏ササミ、シイタケ、ニンジン、香りのよい野菜を加え、好みの味をつけ、丸めて油で揚げたりハンバーグのように焼くと、メインのおかずができます。
 生食はじんましんやぜん息を引き起こすことがあるので、アレルギーの有無がわからない乳幼児は食べないほうが安全です。保存は新聞紙にくるみ、冷蔵庫に。

【「食べもの通信」12月号より転載】