2018年5月31日木曜日


     6月の旬 アンズ
       
             薬剤師 橋本紀代子
アンズの花は色が濃く、青空によく映えます。長野県更埴市などでは浴衣姿でアンズの実を収穫する独特のスタイルが風物詩になっています。
 旬は6月〜7月です。ただし、日もちせず、旬が短いので、産地以外の店頭では生の果実は入手しにくいようです。多くは干しアンズ、シロップ漬け、ジャム、酒類、漬物などに加工されます。
 アンズの原産地はヒマラヤ西部から中央アジアにかけて。中国では数千年も前から薬用として栽培されてきました。現在は、世界各地で食用にされています。
 日本への伝来は平安時代で、薬用でした。現在のおもな産地は青森と長野の両県です。
 アンズの果実は体内でビタミンAに変化するβ-カロテンが多く、老化防止、視力の回復に良いとされています。脳の血行を良くするアミノ酸GABA(ギャバ)、疲労回復の働きがある有機酸も含まれます。
 漢方では固い核の中の種子を「杏仁」といい、咳や痰に効果がある「アミグダリン」を含みます。また油分が多いので、便通を良くする働きもあります。

おいしい食べ方と保存方法
 生のアンズは皮をむいて食べます。ケーキやタルトなどのトッピングにも。
 干しアンズは固いので、100%オレンジジュースで煮て最後にレモン汁を加えると、色がきれいに出て、さわやかな風味の お茶請けになります。
 紅茶煮は、ティーバッグでいれた紅茶と干しアンズを鍋に入れ、落としぶたをして10分ほど煮て、軟らかく仕上げます。
 杏仁豆腐の原料はおもに、アミグダリンの少ない品種からとれる甜杏仁が用いられます。   【「食べもの通信」6月号より転載】


2018年5月6日日曜日


   5月の旬  
                    薬剤師 橋本紀代子

 子どものころ、夏の飲みものは、冷たい井戸水で割った梅ジュースでした。青梅の季節には梅酒と梅ジュースを、梅が色付くころには梅干しを作る風景が、どこの家にもありました。今、私が旅に出るときの必携品は、梅干しと梅肉エキスです。
 梅の原産地は中国の中〜南部の山岳地帯。日本では奈良・平安時代は観賞用で、果樹として本格的に栽培されたのは江戸時代からです。梅干しは、旅人が流行性の病気にかからないように持ち歩いたことから、全国に普及しました。
 生産量が多いのは和歌山県で、全国の60%以上を占めます。早いものは5月末から出回り始めます。

 梅の酸味は、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸などの有機酸で、疲労回復、殺菌、カルシウムや鉄分の吸収を助ける働きなどがあります。糖分とクエン酸が結合してできるムメフラールは、血流を改善します。
 漢方では未熟な梅の果実を薫製にしたものを「烏梅(うばい)」といい、整腸、健胃、止血、駆虫に用います。

おいしい食べ方と保存方法
 梅干しを作るときにできる梅酢は、調味料として人気です。梅ジャムは、完熟梅を水につけてあくを抜き、ヘタをとり、ポリ袋に入れて冷凍し、1日経ったら使う砂糖の半量で煮ます。ザルでこすように種子を除き、残りの砂糖を加えてさらに煮詰めたらできあがりです。イワシなどの青魚を煮るときに梅干しを入れると、魚のくさみを除き、殺菌効果もあります。
 幼い青梅や種子には毒性のある青酸配糖体が含まれるので、生食は避けましょう。梅は冷蔵庫で保存すると変色するので、早めに加工しましょう。
                        【「食べもの通信」5月号より転載】