2024年4月25日木曜日

5月の旬   6月の旬

                6月の旬

                   ホタテガイ

  薬剤師 橋本紀代子 

片側の貝殻を帆のように立てて進むと想像して「帆立」と名づけられました。実際は貝殻を勢いよく開閉して水を噴射し、12mずつ進むそうです。

 扇形の二枚貝で、2枚の殻の色や形が異なります。殻の表面には放射状の筋と年輪様の横の線があり、何年ものかがわかります。

 水深2030mの砂底に生息し、植物プランクトン等を食べて成長します。孵化後45年で15㎝ほどの大きさに。

 オスの生殖巣はクリーム色、メスはオレンジ色です。

 全国漁獲量の9割を北海道と青森県で占めています。漁獲量1位は、天然ものが北海道、養殖ものは青森県です。

 低脂肪でたんぱく質が多く、グルタミン酸、アラニン、グリシンなどのアミノ酸類がうま味や甘味のもとです。

 貝柱には多糖類のグリコーゲンが豊富で、6~8月にとくに多くなります。タウリンや鉄、亜鉛なども含まれています。

 漢方では高血圧症の予防、滋養強壮に良いとされています。

 

おいしい食べ方

 

 赤紫色で平らな方の殻から貝柱と殻の間にナイフなどを差し込み、貝柱を外します。殻が開いたら反対側を剥がします。

 黒いウロとよばれる部分は、貝毒や重金属が蓄積されるところなので除きます。ただし、ベビーホタテとよばれる稚貝のウロは除かなくても大丈夫です。

 貝柱の刺身はワサビじょうゆでいただきます。

 ヒモや生殖巣はサッと熱湯にくぐらせてすぐに冷水に落とし、水気を拭き取り刺身に添えます。

 貝柱、ヒモ、アボカド、薄皮を除いた柑橘類を混ぜてサラダに。

 酢のもの、バター炒め、揚げもの、煮ものにしても。

 乾燥させた貝柱は高級食材で、もどしてスープ、炒めもの、シュウマイの具などにします。

 貝殻焼きには、バターしょうゆが合います。

   【「食べもの通信」6月号より転載】




          


               5月の旬

                  アワビ

               薬剤師 橋本紀代子

 お祝いなどの贈答品の包装に使う熨斗。もともとはノシアワビを用いていました。別名を「打ちアワビ」といい、戦国武将が打ち勝つように縁起をかついで食したといわれます。

 生で食べるとコリコリした歯ごたえがあり、加熱すると特有のうま味が出てきます。

 2022年、クロアワビ、メガイアワビ、マダカアワビの3種類が国際自然保護連合(IUCN)によって絶滅危惧種に指定されました。密漁、乱獲、気候変動などで激減しているためで、早急な対策が待たれます。

 天然アワビの漁獲量は1970年をピークに現在は8分の1に。

 北海道や三陸海岸でとれるエゾアワビなどは、養殖もおこなわれています。

 漁獲量が多いのは、岩手、千葉、三重などの各県です。

 うま味のもとはスタミナがつくといわれるアルギニン、タウリン、グリシン、ベタイン、グルタミン酸などです。目の健康に良いビタミンAやビタミンB1、B2、カルシウムも含まれます。

 民間療法では、煮て食べると産後や手術後の体力回復に効果があるとされています。

 漢方ではアワビの殻を石決明といい、粉末にして目の病気、膀胱炎、血尿などに用いる漢方薬に配合し、煎じて飲みます。 

おいしい食べ方

  身も殻もたわしでこすり、水洗いして汚れを落とします。

 刺身はスプーンなどで貝柱をはがして身を取り出し、肝とくちばしを取り除き薄く切ります。肝は砂袋を除いて5分ほどゆで、刺身に添えます。

 酒蒸しは酒大さじ1/2を振りかけて蒸すだけです。

 もち米にアワビや山芋を入れたかゆは糖尿病の養生食。

 シイタケ、セロリを加えたスープは美味。大根おろし、しょうゆ、みりんで甘辛く煮付けても。

 アワビとホウレンソウの甘酢あんかけも人気の一品です。

   【「食べもの通信」5月号より転載】

 今月の旬

2024年4月2日火曜日

4月の旬

                 4月の旬

                    アサリ

    
        薬剤師 橋本紀代子

  ゴールデンウイークの潮干狩りといえばアサリです。「漁る」「浅い+砂利」などから名付けられたといわれます。

 貝殻の表面は縦横にスジがあり、模様も多様です。身がプリプリしていて、うま味があります。

 旬は春から6月にかけて。関東以南では秋にも産卵するため910月も旬です。

 日本のほか、中国、ロシア、朝鮮半島、インドシナ半島、フィリピンなどに広く分布しています。

 1980年代には13万トン余りあった漁獲量は5000トン以下に減少。激減の原因は乱獲、水質汚染、温暖化の影響のほか、さまざまな要因があるようです。

 漁獲量は愛知県が5割、北海道が3割を占めます。国内流通量の9割は中国や韓国などからの輸入です。

 うま味のもとはコハク酸のほか、多様なアミノ酸類などです。鉄や亜鉛などのミネラル分も豊富です。また、造血作用のあるビタミンB12の含有量が多く、動脈硬化や高血圧を予防するタウリンも多く含まれます。

 漢方ではイライラを鎮め、喉の渇きを潤すとされています。

おいしい食べ方

 砂抜きは、底が平らな容器にアサリを並べ、ひたひたの塩水(1に対し30gの塩)に浸けて、暗くして数時間おきます。使う1時間ほど前にざるにあげて水でよく洗い、塩水の飛び散りを防ぐため一回り大きなボウルにざるごと入れます。

 殻のまま水と鍋に入れて火にかけ、沸騰して貝が開いたらOK。みそを入れればアサリのみそ汁になります。すまし汁、酒蒸し、つくだ煮、パスタ、クラムチャウダーなどにもおすすめです。

 深川飯(丼)は、もともとはアサリのみそ汁のぶっかけご飯で、漁師の朝ごはんでした。いまでは、アサリ、厚揚げ、長ネギをしょうゆとみりんで煮込み、ご飯にかけたものや炊き込みご飯にすることが多くなっています。

   【「食べもの通信」4月号より転載】