6月の旬
ホタテガイ
片側の貝殻を帆のように立てて進むと想像して「帆立」と名づけられました。実際は貝殻を勢いよく開閉して水を噴射し、1~2mずつ進むそうです。
扇形の二枚貝で、2枚の殻の色や形が異なります。殻の表面には放射状の筋と年輪様の横の線があり、何年ものかがわかります。
水深20~30mの砂底に生息し、植物プランクトン等を食べて成長します。孵化後4~5年で15㎝ほどの大きさに。
オスの生殖巣はクリーム色、メスはオレンジ色です。
全国漁獲量の9割を北海道と青森県で占めています。漁獲量1位は、天然ものが北海道、養殖ものは青森県です。
低脂肪でたんぱく質が多く、グルタミン酸、アラニン、グリシンなどのアミノ酸類がうま味や甘味のもとです。
貝柱には多糖類のグリコーゲンが豊富で、6~8月にとくに多くなります。タウリンや鉄、亜鉛なども含まれています。
漢方では高血圧症の予防、滋養強壮に良いとされています。
おいしい食べ方
赤紫色で平らな方の殻から貝柱と殻の間にナイフなどを差し込み、貝柱を外します。殻が開いたら反対側を剥がします。
黒いウロとよばれる部分は、貝毒や重金属が蓄積されるところなので除きます。ただし、ベビーホタテとよばれる稚貝のウロは除かなくても大丈夫です。
貝柱の刺身はワサビじょうゆでいただきます。
ヒモや生殖巣はサッと熱湯にくぐらせてすぐに冷水に落とし、水気を拭き取り刺身に添えます。
貝柱、ヒモ、アボカド、薄皮を除いた柑橘類を混ぜてサラダに。
酢のもの、バター炒め、揚げもの、煮ものにしても。
乾燥させた貝柱は高級食材で、もどしてスープ、炒めもの、シュウマイの具などにします。
貝殻焼きには、バターしょうゆが合います。
【「食べもの通信」6月号より転載】
5月の旬
アワビ
薬剤師 橋本紀代子
お祝いなどの贈答品の包装に使う熨斗。もともとはノシアワビを用いていました。別名を「打ちアワビ」といい、戦国武将が打ち勝つように縁起をかついで食したといわれます。
生で食べるとコリコリした歯ごたえがあり、加熱すると特有のうま味が出てきます。
2022年、クロアワビ、メガイアワビ、マダカアワビの3種類が国際自然保護連合(IUCN)によって絶滅危惧種に指定されました。密漁、乱獲、気候変動などで激減しているためで、早急な対策が待たれます。
天然アワビの漁獲量は1970年をピークに現在は8分の1に。
北海道や三陸海岸でとれるエゾアワビなどは、養殖もおこなわれています。
漁獲量が多いのは、岩手、千葉、三重などの各県です。
うま味のもとはスタミナがつくといわれるアルギニン、タウリン、グリシン、ベタイン、グルタミン酸などです。目の健康に良いビタミンAやビタミンB1、B2、カルシウムも含まれます。
民間療法では、煮て食べると産後や手術後の体力回復に効果があるとされています。
漢方ではアワビの殻を石決明といい、粉末にして目の病気、膀胱炎、血尿などに用いる漢方薬に配合し、煎じて飲みます。
おいしい食べ方
身も殻もたわしでこすり、水洗いして汚れを落とします。
刺身はスプーンなどで貝柱をはがして身を取り出し、肝とくちばしを取り除き薄く切ります。肝は砂袋を除いて5分ほどゆで、刺身に添えます。
酒蒸しは酒大さじ1/2を振りかけて蒸すだけです。
もち米にアワビや山芋を入れたかゆは糖尿病の養生食。
シイタケ、セロリを加えたスープは美味。大根おろし、しょうゆ、みりんで甘辛く煮付けても。
アワビとホウレンソウの甘酢あんかけも人気の一品です。
【「食べもの通信」5月号より転載】
今月の旬