2024年9月2日月曜日

9月の旬

                 9月の旬

              ムラサキイガイ

               薬剤師 橋本紀代子

 ムール貝ともよばれます。日本の在来種であるイガイのほか、たくさんのイガイ類は食用にされます。現在流通しているのは、ほとんどがムラサキイガイです。  フランス料理のムール貝は、ヨーロッパイガイという別種です。  ムラサキイガイは地中海原産ですが、貨物船の船底やバラスト水に紛れて、昭和初期に日本に運ばれてきました。  貝殻は、殻頂が尖った三角形で、表面は紫がかった黒です。足糸(ヒゲ)で海藻や岩に張り付いて成長します。  麻痺、下痢、嘔吐、腹痛などの症状が出る貝毒のリスクがあるので、定期的な水質の検査がおこなわれています。  国内の産地は宮城県、広島県などです。  ロイシン、リジン、イソロイシンなどの必須アミノ酸やグルタミン酸などのさまざまなアミノ酸類が、濃厚なうま味のもとです。  赤血球づくりをサポートし、貧血の予防や改善に役立つ鉄分、ビタミンB12が多いのも特長です。  

おいしい食べ方  

下処理は、たわしで殻の表面に付いた海藻やゴミなどを落とし、足糸を引き抜きます。  酒蒸しはフライパンなどにオリーブ油を入れて低温でニンニクを炒め、貝、酒、塩、コショウを加え、蓋をして中火で蒸します。酒をワインに代えれば、ワイン蒸しになります。  ムラサキイガイ、アサリやタラなど白身魚とズッキーニ、トマトなどの野菜を、オリーブ油とハーブ塩で蒸し煮すれば、イタリア料理「アクアパッツァ」に。  殻を剥き、バジル、ニンニク、パセリをみじん切りにし、粉チーズ、オリーブ油、香草パン粉をたっぷりかけて200度のオーブンで焼くと、貝の甘味とサクッとした食感が味わえます。  鳥取県の郷土料理「いがい飯」は、ゆでたイガイの炊き込みご飯です。ムラサキイガイでも代用できます。

   【「食べもの通信」9月号より転載】


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