10月の旬
イトヨリ(糸撚・糸縒)
薬剤師 橋本紀代子
ピンクとブルーの地色に数本の黄色い帯状の線が入っています。尾ビレの上葉に、黄色い糸が伸びているような部分があり、泳ぐと糸を撚っているように見えるのが、名前の由来です。
標準和名はイトヨリダイ。「金糸魚」「金線魚」のほか、各地に呼び名があります。色がマダイのように艶やかなので「タイ」の名が付いていますが、スズキの仲間です。秋から冬が旬です。
体長は40~50㎝ほど。水深40~250mの砂泥底でエビ、カニ、小魚など小動物を捕食して生息します。
本州中部以南から東シナ海、フィリピン、オーストラリア北西岸にまで分布しています。
西日本では祝いの膳などに用いられますが、関東以北ではあまり見かけません。
味は淡泊で、脂肪分が少なく、
高たんぱく質。うま味のもとのアミノ酸類が豊富です。
ビタミンD、ビタミンEのほか、カルシウム、マグネシウム、鉄などのミネラル類を含みます。
漢方では体を温め、老化防止、疲労回復、免疫力アップに役立つとされています。
おいしい食べ方
皮と身の間に風味があるので、湯霜造りにします。ウロコを取ってから三枚におろし、腹骨をそぎ落として小骨を抜きます。皮を上にして網に載せ、皮の上からさらしをかぶせ、沸騰している熱湯を皮目全体にかけます。すぐに氷水で冷やしたら水気を拭き取り、縦に2カ所ほど切れ目を入れます。崩れやすいので、皮を下にして刺身にします。
塩焼きは振り塩をして余分な水分を拭き取り、改めて塩を振ってグリルで皮目の色がきれいに残る程度に焼きます。
椀種にもよく用います。塩水にサッと浸してから熱湯にくぐらせると汁が濁らず、きれいに仕上がります。中華風蒸しもの、兜煮、アラ汁、ムニエル、フライや天ぷらなどの揚げものにも。
【「食べもの通信」10月号より転載】