2023年5月30日火曜日

        6月の旬

        アユ(鮎)

               薬剤師 橋本紀代子

 日本で最も親しまれている川魚で、「川魚の王」「清流の女王」とよばれます。アユ釣りが解禁になるのは主に67月。この日を心待ちにする釣り人の姿が、目に浮かぶようです。アユといえば炉端の炭火で焼くにおいが漂ってくる気がするのは、父の思い出だからでしょうか。

 アユは形が美しく、「香魚」ともよばれ、スイカに例えられる爽やかな香りがあります。

 冬の間、海で動物性のプランクトンを食べ、春に河口付近に集まるまだ小さなアユを稚鮎といいます。春の若鮎は河口から川をさかのぼり、夏に川底の石に付く川苔を食べて大きくなり、秋に河口で産卵します。1年で一生を終えるので、昔の記録には「年魚」と書かれています。

 北海道から九州、朝鮮半島、ベトナムなど広域に分布しています。日本で漁獲量が多いのは、神奈川県や茨城県、栃木県など。養殖も盛んで、愛知県が生産量トップです。養殖アユは大きく、身がやわらかいのが特徴です。

 アユはたんぱく質、ビタミンA、ビタミンB12、ビタミンD、鉄分も豊富です。老化防止のビタミンEは、養殖アユのほうが天然アユの約4倍も多く含まれています。

 漢方では病後の体力回復に良いとされています。 

おいしい食べ方

 アユは塩焼きに始まり、塩焼きに終わるといわれます。たっぷり塩を振り、ひれには化粧塩*をして、遠火の強火で焼きます。

白焼きしてから田楽みそを塗ったものが魚田です。

 「うるか」はアユの塩辛のことで、内臓だけの塩辛を「渋うるか」、卵巣の塩辛を「子うるか」といい、お酒のお供です。

 そぎ切りなどにして氷水で締める洗いには、シソの葉、穂ジソ、ショウガを添えて。

 ムニエルは内臓をとらずに塩・コショウをして、小麦粉を付けてバターで焼きます。

 

* 指でひれをつまむように塩を付ける

【「食べもの通信」6月号より転載】

  

2023年4月17日月曜日

4月の旬

                  4月の旬              


                  サザエ

                薬剤師 橋本紀代子

  コリコリの食感と磯の香りが特徴です。殻には5本前後の筋と、管状の突起(つの)があります。漢字では「栄螺」。螺は巻貝の総称で、栄が「サザエ」になったなど諸説あります。

 つのの有無は育った海の波の荒さに関係するとされ、波の静かな内湾などでは「つのなしサザエ」も見られます。

 クルクル回転させて身を取り出すと、最後に生殖巣がテテきます。緑色だと雌で苦みが強く、クリーム色だと雄で苦みはわずかです。

 北海道から九州にかけて広く分布しています。漁獲量が多いのは長崎県、山口県などです。

 産卵前の38月が食べごろ。

 たんぱく質が多く、脂質は少なく、ビタミン、ミネラルもバランス良く含んでいます。うま味成分「コハク酸」は、アワビの2倍含まれています。

 β-カロテンやビタミンE、ミネラルのカリウムや亜鉛なども豊富です。血圧を下げ、動脈硬化を予防するタウリンの含有量がとても多いのも特長です。

 漢方では腎の働きを良くし、神経痛、虚弱体質を改善。髪の毛の成長にも良いとされます。

おいしい食べ方

 サザエといえばつぼ焼きです。口を上にして網にのせ、中火以下で焼きます。ふたから水分が吹き上げてきたら1分弱待ち、酒としょうゆを同量混ぜて口から注ぎ、もう一度吹き上がったら、2分ほどで出来上がり。渦巻き状の砂袋、ふた近くの赤い口、ハカマといわれる部位は苦いので、取り除くのが無難です。

 パセリ、ニンニク、コショウを効かせたエスカルゴバターをのせて、オーブンで焼いても美味。

 刺身は、ふたと殻の間にナイフを入れて上部を取り出し、殻に指を入れて反時計回りに回して、下部を取り出します。

 炊き込みご飯、ブルスケッタ、バジルバターパスタ、細かく切りかき揚げにするのもおすすめ。

【「食べもの通信」4月号より転載】

  

2023年3月28日火曜日

3月の旬

                 3月の旬 

                ハマグリ

 

          薬剤師 橋本紀代子

身が軟らかく、味は濃厚。古くから縁起物とされ、結婚式やひな祭りに欠かせません。

 浜に生息し、クリ(栗)の形なので「ハマグリ」とよばれます。北海道南部以南、朝鮮半島、中国、台湾などに広く分布しています。浅瀬に生息するものは別名「ホンハマ」とよばれますが、干拓や護岸工事、水質汚染で激減しています。

 現在は国内流通のおよそ9割が中国産のシナハマグリ。国産の半分以上は茨城県から千葉県の太平洋沿岸でとれる外洋性のチョウセンハマグリ(汀線蛤。日本の在来種)です。

 産卵期に向けて栄養を蓄える冬から春の時期が旬です。

 たんぱく質が豊富です。うま味成分はグリシンやグルタミン酸などのアミノ酸類、グリコーゲン、コハク酸などです。

 鉄、カルシウム、亜鉛、マグネシウムなどのミネラルも豊富。血中の余分なコレステロールを抑え、肝機能を高めるタウリン、ビタミンB群も多く含まれます。

 漢方では貝殻を文蛤(ぶんごう)といい、喉の渇き、寝汗、二日酔いに良いとされています。

おいしい食べ方

 砂抜きは平らで深めの容器にハマグリを並べ、3%の塩水を殻がかぶる程度に入れて、暗い場所に6時間ほど置きます。

 焼きハマグリにするときは、合わせ目の突起を包丁で削ると、口が開かずに汁もこぼれません。23分蒸し煮し、身のついているほうにしょうゆをかけ、オーブントースターで1分焼きます。

 ひな祭りにはナバナや塩漬けのサクラの花をあしらったすまし汁にすると、華やかな一品に。

 酒蒸しはフライパンにハマグリを並べ、酒100mlと水50mlを入れ、ふたをして強火に。殻が開いたらふたをとり弱火で3分煮ます。バター、塩・コショウをしてふたをし、1分蒸し煮にします。

 ブイヤベース、クラムチャウダー、パエリアなどにしても。

【「食べもの通信」3月号より転載】

 

2022年12月13日火曜日

 火事は江戸の花?!

 東京革新懇代表世話人-元都教組委員長 工藤芳弘


江戸は火災都市

「火事と喧嘩は江戸の花」

といわれるように江戸は火事が多く、「火災都市」とも称されています。

江戸の火事の中でも、とりわけ「明暦の大火(振袖火事)」(1657年)、「明和の大火」(1772年)「文化の大火」(1806年)は、総称して江戸三大大火などと呼ばれています。その中でも特に被害が大きかったのが「明暦の大火」です。この大火事は江戸最大といわれ、諸説ありますが10万人以上が亡くなったとも記録されています。また「天和の火事」(1863年)は、「八百屋お七の火事」とも呼ばれ、歌舞伎の題材になったことで有名です。

 木と紙で建てられてい日本家屋の特徴からも、火事の原因は、煮炊きや照明に火を使用したことによるものが多いと想像できますが、放火(火付け)によるものが多く記録されています。放火の理由は、火事騒ぎに紛れて盗みを働く火事場泥棒でした。生活に苦しかった江戸庶民の姿が浮かび上がります。

その当時、世界第一の人口密集都市であった江戸は、建物が密集しており、一度火事になれば延焼を防ぐことは困難でした。そのようなことから、消火作業は放水ではなく、まだ燃えていない周囲の建物を壊して防火帯を作る「破壊消火」と呼ばれるものでした。江戸の火消しの仕事は建物の破壊だったのです。何か戦時中の「建物疎開」に通じるものを感じます。

江戸の大工は花形職


江戸では焼け跡復旧のための建築工事が日常茶飯でした。そのため腕のいい大工は仕事にあぶれることがなかったといいます。大工という職業は、江戸では花形であり、その数も多かったようです。

一人前の大工になるためには、今でいう中学生頃に親方に弟子入りします。しかし、すぐに仕事はさせてもらえません。修業時代としてさまざまな雑用をこなし、やがて簡単な仕事を手伝わされ、一人前になるには10年ぐらいかかったようです。いわゆる徒弟制度です。

江戸時代の大工は今とは違い、設計から材料の手配や現場監督もこなしていました。ただ建材を組み立てるだけではなかったのです。すべてをこなす大工は、ひとたび火事が起これば、手間賃が倍近くにまでなることもあったといいます。また、大工には飯代や残業代もきっちり出ていました。当時としてはかなり恵まれた労働環境だったといえます。そのために幕府はたびたび大工の手間賃を決めるおふれを出しました。賃金抑制のためでしたが、あまり守られなかったようです。

家を建てるためには、大工だけではなく、屋根や壁の専門職人たちもいました。屋根職人や左官職人です。また、指物職人など家具をつくる職人もいました。

「囲山」という江戸の植林

 火事の多い江戸ですが、長屋など、庶民の家屋が焼けた場合、ほとんどは古材で立て直されました。

しかし、大きな商家などの場合は、火事になって焼けた時のために、自分の家一軒分の材木を深川木場に蓄えていました。

非常用の植林は、「囲山」といわれました。武家屋敷などが焼けた時、その植林を伐採して木材を調達するのです。非常時以外伐採しないというのが「囲山」の決まりでした。

江戸に一番近かった木材の生産地は、今の杉並区でした。青梅街道沿いに杉並木があり、「四谷丸田杉」という銘柄の木材を生産していました。

切り出した木材は、荷駄につけたり、石神井川から神田川に流して運びました。材木で筏を組み、河川で運んだのが筏師です。無形民俗文化財になっている「木場の角乗」は、江戸時代に木場の筏師(川並)が水辺に浮かべた材木を鳶口ひとつで乗りこなし、筏に組む仕事の余技から生まれたものです。

12月1月の旬

        12月の旬 

       サントウサイ           薬剤師 橋本紀代子

ハ ハクサイの一品種です。葉はハクサイよりも大きく、緑色が濃く、上部がラッパ状に広がります。地域によっては「山東菜(さんとうな)」とよばれます。

 漬物用に好まれますが12月中旬から2週間程度しか出回らないので、お店で見つけたらラッキーです。

 若どりしたものは、明るい緑色の葉と白い軸の菜っ葉で、「べかな」とよばれます。埼玉県のほうから江戸川などを、「べか舟」という小舟で運搬されたことにちなむ名前です。関西では「ハクサイナ」とも。

 150年ほど前に中国・山東省から伝わり栽培も盛んでしたが、現在は埼玉県南部と東京の多摩地域で種が引き継がれています。

 緑の部分には体内でビタミンAに変わるβ-カロテンが豊富です。ビタミンC、ビタミンK、葉酸、骨や歯の形成に役立つカルシウムも含まれています。

 漢方では胃腸の働きを良くする、咳、むくみなどに効果があるとされています。 

おいしい食べ方と保存方法 

 食べ方はアクがほとんどないので、生のままサラダに。

 サントウサイの浅漬けは、食べやすい長さに切り、2%の塩でもんで、1時間ほど置くだけです。お浸し、炒めもの、みそ汁にも。煮崩れしやすいので、鍋ものにするときは煮込みすぎないようにしましょう。

 サントウサイの漬物は、株を縦に48等分に切り、天日に半日干します。水洗いして水気を切り、重さの3%の塩、トウガラシ、コンブ、薄切りしたユズなどを葉の間に挟みながら漬物容器に並べ、重さの2倍の重石をします。3日ほどで水が上がり、食べられます。残りは重石を軽くして数日間。二度漬けすれば1カ月ほどもちます。

 保存は新聞紙に包み、冷暗所に。べかなは新聞紙に包みポリ袋に入れ、冷蔵庫の野菜室に立てますが、早めに食べましょう。

【「食べもの通信」12号より転載】

 

2022年12月6日火曜日

11月の旬

              11月の旬 

       リーキ 

             薬剤師 橋本紀代子 

 ネギの一種で、地中海沿岸の原産です。長ネギを太くしたような形で、葉は平らです。匂いは長ネギより穏やかで、煮崩れしにくく、加熱すると甘味が増します。

世界中で栽培され、日本へはベルギーやニュージーランドなどから輸入されています。日本での呼称はほかに、「西洋ネギ」やイタリア語のポッロから「ポロネギ」、またフランス語から「ポワロー」とも。

日本では高級食材として扱われています。国内生産量は非常に少なく、特産にして市場拡大をめざす地域も。最近は家庭菜園でも人気です。旬は113月。

匂い成分は硫黄化合物の一種「アリシン」などで、ビタミンB1の吸収を高めて疲労回復の効果があり、抗菌・抗ウイルス作用も優れています。ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンK、カリウム、食物繊維も含まれています。    

漢方では、ネギの仲間には発汗、解熱、健胃、喉の痛みを止める、気持ちを安定させるなどの働きがあるとされています。 

おいしい食べ方と保存方法

おもに根元の白い部分を食べます。若い緑の葉は繊維に沿って細く切り、使用します。   

塩だれはリーキの白い部分をみじん切りにし、すりおろしニンニク、塩、ゴマ油、鶏ガラスープ、レモン汁を混ぜます。ゆでた肉にのせたり、チャーハンに入れるなどします。タレは小分けして冷凍保存できます。

 マリネは白い部分を半分の長さに切り、タコ糸で縛ってリーキが浸るくらいの量の熱湯に塩ふたつまみを入れ、竹串が通るまでゆで、熱いうちにマリネ液(オリーブ油、酢、塩、コショウ、粒マスタード)をかけます。

2022年10月4日火曜日

10月の旬

        10月の旬

       ヒノナ(日野菜)

              薬剤師  橋本紀代子

 日に当たった部分が赤紫色で、根の部分の白色とのコントラストが鮮やかです。茎は濃い赤紫色をしています。その色彩から、「アカナ」ともよばれます。長さは2030㎝で、細い大根のような形ですが、カブの仲間です。辛味とほろ苦さが特長です。

 滋賀県日野町で、室町時代に発見されたことから「日野菜」と名付けられた、滋賀県の伝統野菜です。現在は滋賀、京都、三重などの府県で栽培されています。旬は1012月です。

 根にはでんぷんを消化する酵素「アミラーゼ」が含まれていて、消化を助け、胸焼け、胃もたれを防ぎます。

 葉に多いのが、抗がん作用などがあるとされるβ-カロテン、疲労回復などに効果があるビタミンC、カルシウムやカリウムなどです。

 漢方では、カブの仲間には咳、二日酔い、冷えによる腹痛を治す効果があるとされます。

おいしい食べ方と保存法

 生でサラダに。ぬか漬けやピクルスにしても。温野菜にしてバーニャカウダソースで食べる、天ぷらやバター炒めにしても美味です。

 甘酢漬けは「さくら漬」ともいわれ、パリっとした食感が楽しめます。ヒノナを1日天日に干し、根は短冊切りに、葉は細かく刻みます。それぞれをざるに入れて10%の塩を振り、葉は手でよく揉みます。葉と根に熱湯をかけてアクを抜き、すぐに冷水をかけ、固くしぼります。

 さらに根と葉を交互に重ね、ヒノナの重さの3%の塩を振って重しをし、水が上がったら水気を切って甘酢に漬けると、すぐに食べられます。

 さくら漬は冷蔵で1週間、保存できます。密閉したポリ袋に入れて冷凍すれば3カ月、保存可能です。使うさいは自然解凍で。生の葉は硬めにゆでてポリ袋に入れ、冷凍保存できます。

【「食べもの通信」10号より転載】