2022年3月1日火曜日

3月の旬

               3月の旬 

        三宝柑

                薬剤師 橋本紀代子

 ヘタの部分にデコポン(不知火)のようなでっぱりがあります。希少価値があり、味も良いので、神事に使われる三方にのせて殿様に献上されたことから「三宝(三方)柑(さんぽうかん、さんぼうかん)」とよばれます。 皮はむきやすく、果肉の色は鮮やかな黄色。甘味や酸味はブンタンに似ています。種が多いのも特徴です。 江戸時代、和歌山城内に原木があり、栽培は城内だけとされ、城外には持ち出せなかったといわれています。現在もほとんどが和歌山県内で生産される同県の特産果実です。旬は34月。多くは葉付きで出荷されます。 免疫力を高め、ウイルスなどから体を守るビタミンCや、気管支を拡張し呼吸を楽にする、喉の風邪を予防する、脂肪の代謝を促進するなどの効果がある「シネフリン」、疲労回復と血液をきれいにするクエン酸(酸味のもと)が含まれています。

おいしい食べ方と保存法

 皮は手でむきます。小袋(=じょうのう)は厚くて硬いので、むいてから食べます。ジュースやシャーベットにすると香りが良く、美味です。 皮には苦味がほとんどないので、無農薬ならマーマレードに。雑味を除くためのゆでこぼしは1回で十分です。皮の重さの60%の砂糖を使用して煮詰め、好みでレモン汁を加えます。

 皮を容器にしてあえものを盛りつければ、春の香りが楽しめます。容器は葉付きのほうから3分の1のところで横に切り、実はスプーンでくり抜きます。

 茶碗蒸しの容器にも。皿の上に皮で作った容器をのせ、茶碗蒸しの具と調味した卵汁を注ぎ、蒸し器に入れて強火で7分、弱火で3分ほど蒸します。葉付きのふたをしてできあがりです。

 保存は冷暗所で数日。ポリ袋に入れて冷蔵すれば、長めに保存できます。

【「食べもの通信」3月号より転載】

 

2022年2月15日火曜日

2022年1月23日 人間講座 第27夜

 コロナ禍、もう黙っていられない

―共に生きるため、私たちは声をあげる

初めのあいさつ  佐々木浩人間講座運営委員


司会加瀬唯史さん、東京芸術座俳優 佐藤アズサさんの発言


文京千石虹の家田中邦彦さんの発言
  

富士国際旅行社 西須輝理さんの発言       
首都圏青年ユニオン委員長原田仁希さんの発言
       
パネラー4人のトークデェスカッション①②
        

 
会場からの発言①②
        
       






     

2021年12月14日火曜日

    江戸 農業にみる循環

        元都教組委員長 工藤芳弘 

江戸時代は、今のような流通が確保されていなかったため、地域を中心とした循環型の社会であった。また、自然と共生した低炭素社会であり、現代が直面している地球温暖化の問題などはなかった。つまり江戸は、自然共生の低炭素、循環型の持続可能な社会であった。

だからといって江戸時代の生活に戻ることなどできるはずはないが、自然と調和を保ちながら暮らしてきた江戸のリサイクルやエコの取り組み(考え方)は、現代にも何らかの示唆を与えているのではないだろうか。そのことを農業の面から考えてみたい。

日本人と稲作

1862年(文久2年)に三浦直重という人が、『米徳糠藁籾用方教訓童子道知辺』(こめとくぬかわらもみもちいかたきょうくんどうじのみちしるべ)という農書を著している。江戸時代の水田稲作を中心とした農村地帯の資源循環を述べた著作である。書き出しは、「そもそも米に徳があることを世間の人は一応知っているが、どれほどのものなのかをはたして知っているだろうか」で始まる。米は二千年以上にわたって日本人の生活を支えてきた食物である。日本の気候や風土がイネの栽培にとても合っており、長期保存ができたこともその理由だろう。また、江戸時代の武士の俸給が石高(米の生産量)であったことからも、日本人と米の関わりの重要さがわかる。


副産物をリサイクル

江戸時代の人々は、稲作のあとに残る米の副産物を完全にリサイクルしていた。草履や草鞋は「藁」から作られたものであるが、江戸庶民にとって、草履はサンダル、草鞋は靴であった。三浦直重もその著書で、「米の徳」=「藁」「籾殻」「糠」がいかにすぐれているか詳細に述べている。 

「糠」については、「素肌を洗う」「ものにくっついた油を洗い落とす」「ヌカ床などを作り、漬け物を作る」「紺屋で炒りヌカに糊を混ぜて染め抜きに使う」「ヌカとまぐさを混ぜて馬の飼料にする」「炒って小鳥のえさにする」「畑のこやしにする」「ヌカを袋に包んで井戸掘りの錐の穴に詰めておくと清水が沸き出す」などと記し、「籾」は、「ものを箱などに入れる時、クッション代わりに使う」「湿気取り」「道路の修理」などに使い、「藁」は、「畳」「米俵」「屋根」「草履」などに利用するとしている。

 江戸から続く米の副産物の活用法は、今に引き継がれているものもあるが、「ムシロ」「タワラ」など、今では理解できない子どもたちが多い。「縄跳び」は今でも盛んだが、この「ナワ」が藁を綯(な)って作っていたことなど想像もできないだろう。 

江戸の野菜促成栽培

 「初鰹」など、江戸では初物を珍重する贅沢文化が広がった。そこで江戸の農民は、米などの主食よりも高く売れる初物づくり、とりわけ野菜の促成栽培に力を入れ始めた。

江戸の促成栽培は、寛文年間(1661年~73年)の頃、江戸の大農業生産地であった砂村(現江東区)の松本久四郎が考案したと言われている。砂村ねぎ、大丸砂村西瓜、砂村丸茄子などに名を残している。

促成栽培の方法は、ゴミを堆積すると醗酵熱が出ることを利用したものである。江戸市中から出るゴミを集めて堆積し、その熱を利用して野菜の種を早く蒔けば収穫が早くできるというわけだ。

庶民が贅沢をすると身分制度が揺らぐとして、江戸幕府は度々、出荷日を統制する法令、促成栽培禁止の町触れを出して取り締まったというが、明治維新以後には一層盛んになった。「江戸ゴミ」という都市廃棄物を農業生産に活用(リサイクル)したこの栽培方法は、昭和30年代まで続いていた。


                12月の旬 

                八つ頭               


                  橋本紀代子 薬剤師

 サトイモの一種で、子イモが親イモと分かれずに岩のような塊になっています。ホクホクした食感と独特の甘味が特長です。

 お正月の縁起物とされるのは、人の頭(=リーダー)になるようになど多くの説があります。

 デコボコが多くて調理が大変という短所を克服したのが「丸系八つ頭」で、2014年に埼玉県の研究所が開発しました。

 八つ頭は中国を経由し、平安時代には日本に入っていました。生産量が多いのは千葉県、埼玉県。旬は12月から3月です。

 水様性食物繊維のガラクタンやムチンには、免疫力を高める働きがあります。血圧降下作用のあるカリウムも豊富です。

 えぐ味や、肌のかゆみのもとはシュウ酸カルシウムの針状結晶やたんぱく質分解酵素など。

 漢方では、内臓の熱を取り、唾液の分泌を促し、消化を助け、慢性の便秘や下痢にも有効とされています。

おいしい食べ方と保存法

 すき間まで土を洗い落とし、食べやすい大きさに切ったら、面取りを。あく抜きの下ゆで後に、ぬめりを洗い落とします。

 煮しめは、だし汁に酒、みりん、砂糖、しょうゆを入れ、下ゆでした八つ頭を竹串が通るまで2030分煮ます。

 八つ頭の葉柄は「ずいき」「いもがら」といい、食用にします。

 生のずいきの皮をむき30分ほど水にさらし、熱湯で2分間ゆで食べやすい長さに切り、熱いうちに甘酢に漬けると赤い色が美しく出ます。乾燥させたずいきは、ぬるま湯で30分ほど戻します。5㎝ほどに切り油揚げやコンニャクと炒め煮しても美味。

 八つ頭の保存は、洗わずに新聞紙などに包み、風通しの良い冷暗所に置きます。食べやすい大きさに切ってから硬めにゆで、ぬめりを拭き取ってから保存袋に入れて、冷凍します。煮物には冷凍のまま使えます。

【「食べもの通信」12月号より転載】

 

2021年11月9日火曜日

        11月の旬

         野沢菜 

                 橋本紀代子 薬剤師

 丈は1mほどで、根元に小さいカブが付いています。

 広島菜、高菜とともに「日本三大漬け菜」に数えられます。長野県野沢温泉村には、「お寺の住職が京都から持ち帰った天王寺カブの子孫」という言い伝えがありますが、DNA分析で西洋系の葉カブの変種とわかってきました。

 長野県で広く栽培されるようになったので、「信州菜」ともよばれます。長野県の生産量がダントツで、10月下旬から11月下旬に収穫されます。冬の間は徳島県などで栽培・出荷されています。

 体内でビタミンAに変換されるβ-カロテンが豊富で、免疫力を高め、皮膚や粘膜を丈夫にします。ビタミンC、ビタミンB群、ビタミンK、カルシウム、食物繊維も豊富です。

おいしい食べ方と保存法

 間引きした葉や軟らかい葉は、さっとゆでてお浸しに。小さいカブも刻んで使いましょう。ざく切りした生の野沢菜は、油炒めや煮物に入れても美味です。

 新漬け(浅漬け)は緑色が美しいのが特徴です。野沢菜の重量の約3%の塩を振りかけながら樽などに敷き詰め、コンブやトウガラシを入れ、ふたをして重石を載せ、水が上がってから2~3週間で食べられます。

 時漬けは数日で食べられます。3㎝ほどの長さに切った生の野沢菜、塩昆布、トウガラシ、家庭ごとの漬け汁*を入れて重石をし、冷暗所に置きます。

 べっ甲色の古漬けは2カ月以上漬け込んで乳酸発酵させたもの。漬物を細かく刻み、チャーハンや焼きうどんの具にしても。「野沢菜おやき」は古漬けを塩抜きしたあと油で炒め、しょうゆ、砂糖、酒を入れて煮詰め、生地で包んで油で焼いたあとに蒸し器で蒸します。

 漬物は小分けしてポリ容器などに入れて冷凍保存できます。

【「食べもの通信」11月号より転載】


                10月の旬

        オリーブ


2021年8月31日火曜日

                9月の旬 

                巨 峰

               橋本紀代子 薬剤師

 ブドウのうち、日本で栽培面積が最も多いのが巨峰です。大粒で黒紫のツヤが美しく、甘味が強いのが特長。富士山を望む静岡県の研究所で生まれたので「巨峰」と商標登録されました。

 果皮の白い粉はブルームで、完熟の目安になります。種なしは植物成長調整剤のジベレリンで処理されています。巨峰の生産量が多いのは長野県と山梨県で、旬は811月。

 ブドウはヨーロッパ、エジプトなどで5000年以上も前から作られ、世界最古の栽培果実といわれています。日本には中国を経由し、平安末期に入ってきました。世界の品種は1万種以上。日本の主なものでも60品種以上あります。ブドウに含まれるブドウ糖や果糖には疲労回復や脳の活発化、集中力を高めるなどの効果があります。酸味は酒石酸やクエン酸などの有機酸で、疲労回復効果があります。

 皮の色はポリフェノールのアントシアニンで、目の疲れや視力回復に良いとされています。レスベラトロールもブドウの皮に含まれるポリフェノールで、アレルギーの発症を抑えます。

 漢方では足腰の痛みや流産防止に良いとされ、筋肉が丈夫になる果物とされています。 

おいしい食べ方と保存法 

 水に浸かると傷みが早まるので食べる直前にボウルに入れ、房のまま流水で振り洗いします。

 皮は軸と反対側にナイフで十字に切り込みを入れるときれいにむけます。フルーツサラダ、ケーキやタルトのトッピング、ゼリー、ジャム、ムースなどに。

 冷凍後に水で洗うと、皮はつるんとむけます。そのまま食べればシャーベットに。無農薬の巨峰なら皮はフードプロセッサーでペースト状にして冷凍し、ドレッシングやソースなどに混ぜて用います。保存は房のままキッチンペーパーにくるみ、ポリ袋に入れて冷蔵庫の野菜室に。

【「食べもの通信」9月号より転載】